こんにちは、日本ディレクション協会 広報部の吉田です。
11月21日(土)に開催された「結婚・出産しても続けたい!web業界の女性の働き方」のイベントレポート(前編)をお届けします。
WEB業界の制作現場といえば、
- デフォで残業とか当たり前。
- むしろ、土日出勤で仕事をしてるとか全然ある。
- たまたま休日でも、仕事のメールがバシバシ飛んでくる。
そのため「結婚や出産後に会社でもう一度働くのは難しそう」とか「そもそも復帰して働くイメージができない」と感じる人が結構いるのではないでしょうか。
今回は、そんな問題に一石を投じるために、Web業界の女性の働き方についてフォーカスしたイベントです。前編では、株式会社ヘノブファクトリー代表を務める谷脇 しのぶさんと株式会社シンクスマイルさんの辻 可菜子さんのセッションをお送りします。
「女性がどこでも働けるような会社を作りたい!」
株式会社ヘノブファクトリー 代表 谷脇 しのぶさん 1974年生まれ。2004年にフリーランスとして独立し、屋号としてへノブファクトリーを創業。その後、2006年にへノブファクトリーを法人化。プライベートは同時に小学生の子を持つ母の一面も持つ。 |
ヘノブファクトリーさんは、2015年11月現在、スタッフ17名のうち11名が女性で、妊娠・子育て中のスタッフも多数在籍しています。またいろいろなタイプの働き方があるにも関わらず、すごーくいい感じのコミュニケーションを取りながら成長を続けているという、夢のような会社です。
今回は、子供がいるスタッフが働きやすい環境を作るまでの苦労と、それを維持するために必要なことをテーマに話してくれました。
創業初期と妊娠が重なった、壮絶すぎる経験を経て得たもの
谷脇さんがフリーランスで独立した頃のWEB業界は、「徹夜で制作が当たり前」という風潮。当然、法人化したヘノブファクトリーでも残業や土日出勤も日常茶飯事でした。
そんな状況の中で谷脇さんに最大のピンチが訪れます。
なんと谷脇さんは新しい命を授かりますが、仕事が手離れしないまま、そのまま出産の日が近づいてしまったそうです。
谷脇さんが当時を振り返ると…
- こちらからの営業にも関わらず、お客様に会社に来てもらってた
- 出産前日まで営業と一緒にディレクションをやっていた
- 1番動けない時期は、フリーランスの友人に頼み込んで社長代理をしてもらった
などの普通じゃありえない、壮絶すぎるエピソードが。
結果的になんとか乗り切ったものの、当時のメンバーは1人を除いて全員やめてしまったそうです。
超大変だった当時、谷脇さんは「こんなに頑張っているのになんでわかってもらえないんだ…」と悩んだそうです。でも、しばらくして一緒に働いていたメンバーの頑張りと、それに対する自身の感謝の足りなさに気づき、谷脇さんは心に誓います。
「このままの会社ではいけないんだ…」と。
当時のヘノブファクトリーは、社員に示すべきルールもビジョンもなく、社長の自分が語ることもなかったそうです。こんな状況からヘノブファクトリーの改革が始まります。
改革を断行し、「女性が働きやすい会社」に変えた
その後、なんと5年もかけて、谷脇さんはヘノブファクトリーの改革しました。
大きくは次の4つ。
- 全員が、「自分で考えて動ける」組織に
- 話しやすい「空気感」を整える必要がある
- 1人2役の役割(武器)を持つこと
- 粘り強く伝え、広げるための「ルール作り」
組織改革には「仕組み」と「意識」双方の変化が必要です。いろいろな事例の中で、私が特に感銘を受けたのは次の2点です。
特定のクライアント&個人に「依存しない」体制づくり
まず、受託だけではどうしてもクライアントに左右されてしまうため、メディアの運営など自分たちを中心にできる仕事を増やしたそうです。
次に、個人に仕事の体制が依存しないよう組織構造を整えました。具体的には、1人2役~体制に移行し、1つの仕事ができなくなったら職場にいられない状況を避けることを狙ったそうです。
そうすることで、自然とメンバーの視野が広がり、だれか休んだ時でも自分たちで勝手に考えてフォローするなど、いつの間にか勝手に全員が自分で考えて動けるようになったそうです。
ルール策定と粘り強い啓蒙で働きやすい空気感を作る
さまざまな働き方を許容すると、異なる立場感での軋轢がどうしても生じやすくなります。ヘノブファクトリーでは、それを防ぐために何よりも「つながり」作りを大切にしたとのこと。
その中でも一番大きいのは、会社を働きやすい環境に変えることを使命にもった「バックエンドdept」という新組織を作ったことだそうです。
この組織のミッションは、あるべき空気感を会社全体に浸透させること。そのために、決めたルールを、粘り強く啓蒙していったそうです。
- ほめるを見える化できる社内SNS「HoooP」(後述)の導入
- 問題が大きくなる前に懸念を共有する「モヤモヤアラート」
など、とにかく今までのやり方を変えていったそうです。
会社を変えるのは、一人ひとりが変わるところから
谷脇さん曰く、「会社は、一人ひとりを写す鏡」だそう。だから、自分が変われば少しずつでも周りは影響されていくんだそうです。
だから自分から動いてみようという話でした。
私が所属する会社はちょうどヘノブファクトリーと同じくらいの規模の会社で、谷脇さんの言葉はすごくしっくりきました。
大きい会社に比べ、中小企業では比較的一人ひとりの組織への影響力が大きくなります。だから、誰かが会社と自分の未来をしっかり照らし合わせた働き方を提示しはじめれば、会社全体が変わっていきます。
そのとき何を手本に「女性が働きやすい会社」を考えればいいのか…ヘノブファクトリーのあり方は、1つの道を示すものだと思いました。
「ほめるを見える化でコミュニケーションを活性化!」
株式会社シンクスマイル 辻 可菜子さん 1989年生まれ。仕事ができる系女子。「ほめ達!」という、ほめる達人集団の1人。 |
シンクスマイルさんは、2007年に創業したWeb系の企業で「CIMOS」という独自の評価システムがある会社です。
今回、辻さんからは、「CIMOS」のASP版である「HoooP」というツールの紹介を中心に話をしてもらいました。
簡単にいうと「HoooP」とは、
- 活躍のエピソードや個人の特性を可視化する
- かわいいバッジを気軽に送ることで仲間を評価し合う
など、「ほめる」ことをベースに、社内のコミュニケーションを活性化させるツールです。ヘノブファクトリーの谷脇さんは、人事の方法に悩んでいたことをきっかけにこのツールを導入し、社内の意思疎通が良くなったそうです。
辻さん曰く、ほめるとは、価値を見つけて伝えること。そして、「ほめる」量が増えると、組織のコミュニケーションが自然とポジティブになっていくのだといいます。
私は、「ほめる」って今までそんなに意識的にはしてませんでしたが、
- チームメンバーと自分の両方の良さを理解しやすくなる
- コミュニケーションの量が増え、職場の雰囲気が良くなる
などチームのマネジメント観点でも必要だと感じました。また、誰でも直ぐできるので、会社のチームでやってみてもいいかも!と思います。
この後は、谷脇さんと辻さんだけでなくWeb業界で働いている女性やパパディレクターなども加わり、トークセッションをしました。