4月12日、日本ディレクション協会の1周年記念として「日本ディレクション協会の1周年記念感謝祭 掟破りのディレクター対決!?」というイベントを開催しました!スタッフとして参加した私、WEBCRE8.jpの酒井優からイベントレポートをお届けいたします。
今回のイベントを通して「ディレクター」という職業に就く人の、一つの資質のようなものを改めて感じました。それを私の視点で語らせてもらおうと思います。
ディレクターVS●●の熱闘!掟破り対決の全貌を公開します
会場はクリーク&リバー社のセミナーホールをお借りしました。来場者は全体で80名程度で、参加者のほぼ全員がディレクターやディレクターを志す人!
今回は1周年のお祝いイベントということで、通常よりも比較的ライトなイベントにしようとの話もありました……が、結局トークセッションでは表題にあるように熱のこもったディスカッションになっていました。
オープニングは中村会長による、ディレ協の活動理念やディレクションとはといった内容の基調講演から。
改めて、日本ディレクション協会の命題とは
ディレ協は、すべてのイベントにおいて「世のディレクターの質を上げる」という命題により実施しています。
実際のところ現在、ディレクターの募集は給与、数ともに増加傾向にあるそう。つまり、どの企業も優秀なディレクターを求めているという状態です。その高い期待に応えるためには、ディレクター全体が質の底上げを図っていかなければならないということですね。
ディレクター VS デザイナー
【ディレクター/中村健太 VS デザイナー/柴田大樹】
ディレクターとして中村会長が、デザイナーとしてしばっちこと柴田さんがセッションをおこないました。お題に沿った形で、両サイドからの主張や提案が繰り広げられます。
「ディレクターはデザイナーに何を渡すべきか、デザイナーはどこまで情報を欲しいのか」という質問に対し、中村会長(ディレクター)は
- 企画書
- 提案資料
- 原稿
- ワイヤーフレーム
とし、柴田さん(デザイナー)からは
- 企画書
- ワイヤーフレーム
- ムードボード
といったものを挙げました。
これらの条件から、中村会長(ディレクター)は案件自体の情報ほぼすべて、柴田さん(デザイナー)はデザインのために必要な、要約された情報が必要だと考えていると言えます。
Webサイトが目的に対してどういった立ち位置を持ち、その企業におけるプロジェクトの熱量がどの程度かなど、依頼者自身がどのようなWebサイトを欲しているのかは資料に目を通さなければ汲み取りにくいはずです。それをどの段階で形にするかということに関して、二人の見解は少し食い違っているようでした。
しかしながら、他にも実際の現場でデザイナーとディレクターの意見は食い違うことも多々あるわけで、そうした場合お互いが納得するまで話すというのは中村会長と柴田さんの共通の結論でした。これは二人が一緒に仕事をして来た経験(元同僚)が反映されているのかもしれません。
プロジェクトが一つの目的に向かって進んでいるなら、ディレクター、デザイナー、そして究極にはクライアントも含めたすべてがチームとして取り組むべきでしょう。
トップダウンではなくそれぞれのセクションがそれぞれの専門として意見を言えるチーム作りが最も大事という、これも二人の共通の考えでした。
ディレクター VS クライアント
【ディレクター/高瀬康次 VS クライアント/大谷知子】
クライアント編ではディレクターとして高瀬さんが、そしてクライアントの立場から大谷さんがセッションをおこないました。
ありがちなのは、クライアントがねじ込んでくる追加要件や、担当者よりも上の権限を持った人物からの鶴の一声で制作自体が覆る状況ですね。これはクライアント側の大谷さんからは「実際、仕方がないんですよね…」と、ぶっちゃけた意見が。
それに対しディレクターの高瀬さんは「要件定義の中にないものはない」と断じる姿勢も見せつつ、それでも最大限にクライアントと、同時にチーム内にも納得する流れを作らなければならないとしました。そのためにもまずは、こちらはWeb制作においてプロフェッショナルであることをクライアント側に強く認識してもらう必要があるでしょう。
クライアントがこうしたい、という意向を聞いたとき、その先にはどんな目的があるかを読み取ります。ディレクターはそれを論理的に解きほぐし、クライアントが考慮できていない点や矛盾を発見します。そこでクライアント側にプラスになるような指摘や提案が出せれば、ここについては制作側に任せようという形を作ることができるはずです。
こうしてプロであるという姿勢を見せることは、受注につながった場合はクライアント自身の安心にもつながります。反対に、譲歩や価格重視での受注は「本当に任せて大丈夫か」という疑念もはらんだままになってしまいます。やはり受注の段階で信頼を持ってもらうのがベストなのです。
最後に高瀬さんは、こうした制作の都合や意図を理解してもらうやり方だけではなく、チーム内、社内にクライアントの都合も納得させる形を作るのもディレクターの仕事であるとまとめました。
ディレクター VS 採用担当
【ディレクター/日本ディレクション協会 岩崎真由子、佐藤卓真 VS 採用担当/クリーク&リバー社 渡辺和宏】
最後のセッションはクリーク&リバー社で人材紹介関係のお仕事をされている渡辺さんが採用担当側として、ディレクターはディレ協内でも新人のディレクターである佐藤さん、学生でディレクター志望の岩崎さんが参加してディスカッションをおこないました。
まず「Web業界の転職の現状ってどうなの?」というざっくりとした問いに対し、渡辺さんからは「非常に活況である」との回答がありました。年齢としては20代前半〜30代後半の人が多いものの、よく言われるエンジニア35歳定年説に反して、ディレクターは多くの人が転職を成功させているそうです。
続けて渡辺さんは、実際に就職・転職の準備をしている人たちのイメージと、実際の求人側の考えのギャップを挙げています。
実績を示すポートフォリオや実務経験があれば話は早くなりますが、それがないとダメだということではなく、採用担当者は人柄、特にその業界でやっていきたいという主張の部分をかなり重視するのだとか。
もちろんそれは単にやる気があるというだけでは厳しく、業界に入るために積み重ねていることがあるのか、スキルをつけようとしているかといった姿勢が大事だということです。
他にもディレクターとしての求人という視点で考えた場合、履歴書に携わったWebサイトのURLが書いてあるだけではダメだとします。それについての分析をおこなっていることを書いていたり、業績の伸びなどについて言及していなければ、そういった具体的発想を持っていない人だと思われてしまうわけです。
さて、ディレクター側の二人はこれからの人材ですが、やはり仕事が合わないと感じたときどうするべきなのか、この先自分がどうなっていることを目的とすればいいのかといった疑問を持っていました。
「年収を上げるには」、「年齢が上がっていくにつれてどうなっていけばいいか」、「キャリアをどう積めばいいか」などの問題について共通して言えるのは、「ディレクターには時間の経過とともにWebサイトのディレクションだけではなく、チームひいては会社をディレクションする能力が求められてくる」ということでした。
目的意識を持ちこうした要求に応えていくということが、年収やキャリアなど、これらすべての問題に対する答えになるでしょう。
デザイナーやクライアント、採用担当者がディレクターに求めているものとは
イベントを振り返り、それぞれのディレクターや担当の人の意見を総合してまとめてみましょう。
デザイナー、クライアント、採用担当者、それぞれの役割の人がディレクターに求めているものは、主体的に想像(観察・分析)する能力であると考えられます。
デザイナーがどういった情報を求めているか、クライアントがどんな提案を欲しているか、採用者がどんなアピールに好感を持つか……それを想像するというのは言葉にすると当然のように思えることですが、それができていないことでお互いの望まない結果が生まれてしまうことも多くあります。
主体的に想像力を働かせることで、相手の要求に先回りしたり、不測の事態に備える事ができるのです。
また、ディレクターは仮に自分では手を動かさなかったとしても、メンバーが手を動かす作業それぞれのことをしっかり考えないといけません。「それは私の仕事ではない」と考えてしまうと、「そこも私の仕事のうち」と考える他の職種の人にコントロールされてしまいます。プロジェクト全体を見渡すディレクターこそが、これをやらなくてはなりませんよね。
今回は「対決」と銘打ちながらも、結局はディレクターを含むすべてのメンバーが同じ結果を望むプロジェクトのチームだという認識を深められるイベントになっていたかと思います。1周年というコミュニティの節目のお祝いイベントではありましたが、内容的には非常にアツいものとなりました!
日本ディレクション協会ではこれからもディレクソン、ゼロディレなどのディレクターの質を向上させるための様々なイベントをおこなっていきますので、ぜひ注目していただければと思います!
最後になりましたが、自己紹介をさせていただきます。日本ディレクション協会所属メンバーの酒井優といいます。Web制作・Webデザインに関する情報や知識、考察を中心としてWebサービスの利用や制作に関しての話題を扱うWEBCRE8.jpというブログを運営しています。
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